公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
周囲から悲鳴があがったが、当の私だけは冷静だ。
覚悟を決めて飛び出したのだから、危なかったと肝を冷やすこともない。
すぐにゴラスの兵や、馬を飛び降りた視察団の護衛に囲まれ、何本もの剣先を向けられる。
それも予想していたことなので、やはり私だけは動じなかった。
「おい、女! 進路妨害とはどういうつもりだ。オルドリッジ公爵の視察団と知っての狼藉か!?」
護衛の兵に怒鳴るように問われ、私はその男ではなく、馬車を見据えて答えた。
「ええ。知っていて馬車を止めたの。オルドリッジ公爵に話があるのよ」
「この女、気が触れてるのか?
公爵が、お前のような卑しい女とお話しになるわけなかろう」
護衛の剣先が、私の喉元に突きつけられる。
両腕はゴラスの兵士に捕らえられていた。
それでも私は怯むことなく、馬車を見続けている。
オルドリッジ公爵、早く出てきて……。
そんな心の声が届いたかのように、馬車の扉が内側から開き、彼が降りてきた。
後ろに従者をひとり伴い、優雅な足取りで歩み寄る彼は、「退がれ」のひと言で、自身の護衛もゴラスの兵も、私から遠ざけてくれた。