公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
侍女とは、上級女性貴族の身の回りの世話や、供をする雇用人のこと。
召使いよりは力のある存在だ。
貴族社会の実際を目にしたことはない私だけど、噂話は宿に泊まる旅人から入ってくる。
王都に屋敷を構える上級貴族の男たちは、近侍という男性従者に身の回りの世話をさせている。
しかし中には、多くの侍女を雇い入れて自身の世話をさせ、夜にはベッドにはべらせている好色者もいるそうだ。
その様はまるで異国のハーレムのようだとも聞いたことがある。
それを知った上で、オルドリッジ公爵の侍女になることを願い出た私だが、それが最終目的ではない。
彼を私にのめり込ませたいと企んでいる。
私の頼みなら、なんでも聞いてくれるような関係を築きたいのだ。
それは勿論、この男の権力を利用して、ゴラスを救うためである。
公爵はフンと鼻で笑って私を見下ろしていた。
私の覚悟も発言も、くだらないと言いたげに。
彼は半歩距離を詰め、昨夜と同じように顎先をつまむと、私の顔を上に向かせた。
そして、息のかかる至近距離から、無遠慮に私の目の中を覗き込んでくる。