公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
「俺に惚れたのか?」
綺麗な顔でニタリと笑い、おもしろそうに聞いてくる彼。
惚れるわけないじゃない……。
私には、恋などという贅沢な思いを抱く暇はない。今までも、これからも。
頬を赤らめることも目を逸らすこともせず、無言でじっと彼の琥珀色の瞳を見据えていた。
すると、近すぎる顔の距離を戻した彼は、顎から指も外し、興ざめしたような表情をする。
それはおそらく、彼が期待する反応を、私が見せなかったせいだろう。
「違うようだな。ならば、なにが目的で連れていけというのだ。貧困から逃げ出したいのか?」
「それも違うわ」と今度は言葉にして答えると、「分からん女だな」と公爵は凛々しい眉の片方だけを吊り上げた。
「まぁいい。お前の目的がなんであれ、俺に侍女は不要。それに、お前は知らないだろうが、侍女は召使いではないぞ。ある程度の社会的地位が必要だ」
私では侍女になる資格がないと言いたげに諭した彼に、『そのくらい知ってるわ』と心で言い返す。
これも旅人から聞いたことで、騎士や男爵など、地位は低くても爵位のある家柄の子女が、上級貴族に侍女として雇われているという話だ。