公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~

そう、私は貴族の出自。

元貴族と言ったほうが適切かもしれないが、今は亡き祖父は領地を失っても、爵位までは剥奪されなかったそうだから、私も一応貴族の娘ということになる。


祖父の代までエリオローネ家は、東の隣国との境界に領地を持つ裕福な貴族だった。

辺境伯というのは、多民族と接する領地を保有するため、国にとって重要なポジションにあり、階級としては侯爵と同程度だという。


まだ私が生まれる何年も前に、その領地を隣国に奪われてしまい、国境線は書き換えられた。

祖父は戦死し、爵位を継いだがまだ若く、力のなかった父は身を隠すようにして逃げ延びて、このゴラスまで流れ着いたそうだ。

そして普通の町娘だった母と出会い、私が生まれ……。

しかし、家を再興する術を見つけられずに身分を隠して兵士として雇われているうちに、紛争地に送られて戦死してしまった。

父の遺体すら戻ることはなく、私と母は困窮した生活を送るしかなかったのだ。


生まれてから、ただの一度も貴族らしい暮らしをしたことはなく、ドリスにさえ出自を打ち明けたことはない。

そんな私が今は、「エリオローネ辺境伯の娘です」と虚勢をはる。

公爵の関心を引くために。

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