公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
そう言われた伯爵は、慌てて兵士の剣を下ろさせる。
やはり領地内といっても、オルドリッジ公爵の上には立てないらしい。
とりあえずの危険は去ったが、公爵は私を守るように抱き寄せたままで、腕を外そうとしない。
驚きから回復した私は、まだうるさい自分の心音に戸惑っていた。
こんなふうに、誰かに守られるのは初めてよ……。
未だかつて味わったことのない、不思議な感覚の中にいた。
男の腕の中が心地よいと感じるなんて、一体どういうことなの?
男なんて、みんな金づる。
今までそう思っていた私にとって、男と触れ合うことは貢ぎ物に対する報酬であり、それは嫌悪を伴うことだった。
それなのに、公爵の腕の中は少しも嫌だと感じられない。
それどころか、喜びに似た浮き立つような思いが、この胸の中に微かに芽生えているのだ。
どうして……。
疑問に思った後は、こんな気持ちはいらないと、すぐに冷静さを取り戻す。
彼の胸を押して体を離すと、半歩、横にずれて距離を取った。
それはどうやら公爵にとっておもしろくない態度であったようで、横目でジロリと睨まれた直後に、再びその腕に捕らえられた。