公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~

泣いている彼女をじっと見据えていると、公爵が右手で私の顎を掴み、斜め上に向かせた。

そこには私の顔を覗き込むようにしている端正な顔があり、ニヤリと口の端を吊り上げて彼は問う。


「やはり、連れていくのはやめた……と言ったら、お前はどうする? 同じように泣くのか?」


試すような言い方に、私は答えを模索する。

しかし、考えても彼がどんな返事を望んでいるのか分かりそうになく、正直な気持ちで答えることにした。


「泣いても結果は変えられないでしょう。くだらないわ。連れていかないと言うなら、勝手についていくだけよ。馬の尻尾にしがみついてでも」


再び高らかに笑う公爵だったが、先ほどとは違い、今の笑い方には楽しそうな響きが感じられる。

どうやら私は、正解したようだ。


「出発するぞ」と彼がひと声かけると、護衛の者たちは馬に跨り、御者は馬車の扉を開けて頭を下げていた。

彼にエスコートされる私が、馬車に向けて歩き出すと、沿道の群衆の中から「クレア!」と呼ぶドリスの声がした。

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