公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
黄色の月が王都の夜空を飾る二十一時、沐浴を済ませた私は、自室の鏡の前で髪を梳いていた。
着ているものは寝間着ではなく、淡く澄んだ水色のワンピースで、エプロンは外している。
櫛を鏡台に置き、ランプの明かりに照らされる真顔の自分と視線を合わせながら、そのときがくるのをじっと待っていた。
料理人には内緒にすればいいと言ったけど、今夜の晩餐を作った者が私だと、ジェイル様は気づくはずだ。
ゴラスの庶民の生活路まで視察していた彼だから、捻りパンがゴラスの食文化であることも知っていることだろう。
そして彼は私を呼び出すのだ。
注意を与えるために……。
そろそろ彼は食事を終えた頃かと思ったら、緊張に鼓動が二割り増しで速度を上げた。
常に冷静でいないとと、深呼吸をして心を落ち着かせると、この部屋のドアが小さく三度ノックされた。
きたわ……。