公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
長椅子には、ワインレッドのビロード生地を銀糸で美しく彩ったクッションがひとつ添えられている。
彼はそれを手に取り、枕にして、完全に長椅子に寝そべってしまった。
「どうした?」と問われ、「脱げないのなら出ていけ。話は終わりだ」と冷たく言い放たれる。
考えていただけで、覚悟がないわけじゃない。
『見くびらないで』と心に呟いた私は、水色のドレスに手をかけた。
Uの字に開いた胸元のボタンを外し、ドレスを裾から捲り上げるようにして脱ぎ捨てる。
レースのついた上質の下着も、ここで揃えてもらったもの。
靴を脱いだ後に下着もためらいなく剥いでいき、絨毯敷きの床に落とした。
一糸纏わぬ姿を男性に見せたのは、生まれて初めてのこと。
私に言い寄ってきたゴラスの男たちの中には、裸を見せろというような要求をしてきた嫌らしい者もいたけれど、応じなかった。
金貨一枚をくれてやると言われても、そこまでのことはできない。
男たちに対する嫌悪や、貢ぎ物の報酬を与えることに罪悪感のようなものもあり、なるべく触られないようにしていたし、肌を見せることもしなかった。
それが今は、嫌だという気持ちさえ湧かない。
いや、心の奥底に押し込め、覚悟という名の蓋をして、湧き上がってこないようにしている。
娘らしい恥じらいや、嫌悪さえ捨て去らなければ、きっとこの人は落とせないと思うからだ。