公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~

私が教養を身につけても、使う場所がない。

サロンや宴に出席して他の貴族と交流するわけでもないし、家の再興を望んでいるわけでもない。

私が貴族的に振る舞う必要はないのだ。


読み書きと金勘定さえできれば問題ないと思う私に、ジェイル様は諭すように言う。


「クレアは教養を身につけねばならない。必要性ならあるぞ。俺は中身のない女は嫌いだ。いくら見た目が美しくとも、抱きたいとは思わんな」


挑戦的な目をして「俺を落としたいんだろ?」とニッと笑った彼に、私は素直に頷いていた。

そう言われたら、勉強する気になるわね……。


「よし」とジェイル様は立ち上がり、私の腰に腕を回して歩き出す。

誘導された先はドアだった。


「学びやすいよう、毎日課題を与えよう。時間があれば、俺が教師をしてやる。早く知識を身につけて、俺が惚れるような才女になれよ」


アハハと楽しそうに笑う彼にドアの外に追い出され、パタンと扉を閉められた。

明るい執務室から出ると、廊下はやけに薄暗く感じる。

暗さに目が慣れるまでその場に佇み、静けさの中で私は眉を寄せて考えていた。


今日企てた計画は、失敗なのか、成功なのか……。

台本通りにはいかなかったけれど、今後、彼と過ごせる時間は増えそうで、望む結果には近づけた気がする。

でも、からかわれて上手くあしらわれ、彼の思惑通りに動かされたような……。


私よりも彼が終始優位に立っていたのは気のせいではなく、ずる賢さもきっと上。

私にあの人が落とせるだろうか?と疑問が湧いて、迷いが生じる。

なにもできないまま、ゴラスに逃げ帰るつもりはないけれど……。



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