公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
ふたりきりの充実した勉強時間は、時が早く過ぎ行き、やがて書庫の扉がノックされた。
現れたのはオズワルドさん。
今日も真面目で愛想のない顔を見せる彼は、「朝食のご用意が整いました」と事務的にジェイル様に伝える。
私にはひと声もかけてくれず、それからすぐに扉を閉めて出ていった。
ドアの開閉により窓から涼風が吹きつけて、バラの香りが色濃く私の鼻に運ばれてくる。
それによって私はまたしても、ふっと気を抜きたくなるような気持ちにさせられていた。
何度嗅いでも、いい香りね……。
「ここまでにするか」とジェイル様は椅子から腰を浮かしかけていて、手元の本を閉じ、別の本を私の前に置いた。
「さっき教えた部分は復習しておけよ。それと、これは明日の朝までに目を通してーー」
私が学ぶべきことを指示している最中に、なぜか彼は途中で言葉を切った。
椅子に横向きに座り直すと、ニヤリと口の端を吊り上げて私を見る。
「勉強を教えてやるようになって、ひと月か。お前の努力と根性は認めてやる。知識の向上も目覚ましい。今日は褒美をくれてやろう」
「褒美?」