公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~

顔を僅かにしかめて彼を見返した理由は、褒美など必要ないと思っているからだ。

メアリーの薬代が必要だったときとは違うのだ。アクセサリーも宝石も欲しくない。


しかし彼が与えようとしている褒美とは、物ではなかった。

長い腕が一瞬にして私の後頭部と背に回され、勢いよく抱き寄せられた。

咄嗟に突っぱねることもできないほどの素早さで、私は鼻先を彼の胸元に埋めていた。


シルクのブラウス一枚の胸元からは、均整の取れた程よい筋肉の質感が伝わってくる。

彼が私に惚れた結果としての行為なら、しめしめと思うところだが、まだそんな関係に至っていないことは分かっている。

だったら、なぜ?

抱きしめられることを私が望んでいると、彼は思ったの?

褒美という言葉から、そんな推測ができた。


彼の腕は力強く、私の力では抜け出せそうにない。

上品で甘いバラの香りをうっとりと吸い込みながらも、「これのどこが褒美なの?」と反論すれば、耳元に低く艶めいた男の声がした。


「バレてないとでも思ったのか? お前、ときどき俺の匂いを嗅いでいるだろう。これはバラの香水だ。
好きなんだろ? 存分に嗅いでいいぞ」


途端に真っ赤に染まる私の頬。

まさか気づかれていたなんて……。

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