公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
クンクンと鼻を鳴らしてあからさまに嗅いだつもりはないのに、どうして?
彼の察しがいいのか、それとも私は自分で思うほどには注意深くないということなのか。
恥ずかしさに慌て、全力で彼の胸を押したら、腕の力を緩めてくれたので、すんなりと距離を離すことができた。
まだ赤みの引かない私の顔を見て、彼はアハハと愉快そうに笑う。
「俺の前で、ためらいなく全裸になった女が、この程度のことで恥じらうのか?」
「これは、その、バレてないと思ってたから……」
視線を落ち着きなくさまよわせ、モソモソと答えれば、彼をさらなる笑いの壷に落としてしまったようだ。
「したたかで度胸があり、この俺を相手に悪巧みをするお前が、言い訳も思いつかんのか!」
「そんなに笑うことじゃないでしょう?」
「いいや、笑うところだ。食事でも、お前はまず嗅ぐよな。パンでもスープでも、なんでも。俺の前でだけなら構わんが、余所でやるなよ。犬じゃないんだからな」