公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~

ジェイル様は車窓を過ぎる主な建物のひとつひとつに、解説を加えてくれる。


「あれは商工会議所だ。王都の商人や職人は組合と呼ばれる組織を作り、お互いの権利を守っている。建物は百年以上の歴史があり、中央が太い円柱の柱と破風の彫刻は……」


この外出はきっと王都についての学習で、物見遊山ではない。

彼が話してくれることは、私が記憶しなければならない知識なのだと思って、真剣に耳を傾けていた。

そうやって勉強しながら大通りをゆっくりと進んでいたが、ある場所まで来ると、御者が馬を止めた。

「この先は、今はまだクレアを連れていくことのできない場所だ」とジェイル様が言う。


ここは大通りの端で、その先は木立の中を緩やかな坂道がうねるように伸びているようだ。

小高い丘の上にそびえるのは王城。

この街に到着した日にも、遠目に城の姿を確認したが、丘の麓から見上げると、その巨大さがよく分かった。


何本もの尖塔を備えた石造りの城は、立派という言葉だけではとても表現できそうにない。

荘厳で威圧的で、まさにこの国の支配者が住まうに相応しい。

その尖塔には、双頭の鷲の国旗がはためいていた。


この城の門を、祖父や父は潜ったことがあるのだろうか……と考えていた。

エリオローネ家がまだ領地を保有し、辺境伯と呼ばれていた遠い昔に……。

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