公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~

「ここは?」と問うと、「青空マーケットだ」とジェイル様が教えてくれる。

新鮮な食材、特に海の幸は水揚げ間もないものが並べられ、その価格は街の中心部の店より遥かに安いという。

珍しい魚が網にかかることもあり、食道楽の貴族たちが自らマーケットに足を運ぶこともあるそうだ。


広場の端には馬車止めが用意されていて、そこに五台の馬車が止められていた。

馬は水を飲んで木陰で休憩し、御者がのんびりと番をしている。

私たちの馬車もそこで止まる。

買ってもらったばかりの淡い緑色の鍔広の帽子を被り、私は石畳の地面に足を下ろした。


倉庫に遮られて見えないが、海の気配を感じる。

海を見たことのない私だが、ドリスの宿屋に泊まった旅人のひとりが『潮の香り』と言っていたのは、きっとこの匂いのことだろう。

耳を澄ませば、波音も聴こえてきた。


「行くぞ」とジェイル様はブーツの爪先を倉庫の方へ向けた。

倉庫の脇を通り、港へ出ようとしているみたい。

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