イジワル部長と仮りそめ恋人契約
お兄ちゃんが、空いていた私の右隣の空間に身体を滑り込ませた。
たった今手渡された空木さんの名刺を、まじまじと見つめている。
「『豊臣商事』の営業部主任……まだ若いだろうに、ずいぶんと優秀でいらっしゃる」
「とんでもないです。千楓さんこそ、『ミスミ電機』本社の商品企画部課長とは。俺なんて足もとにも及びません」
いつものことながら真顔のお兄ちゃんと感じのいい微笑みをたたえた空木さんの会話を、ふたりの間に挟まれながら居心地悪く聞く。
お兄ちゃんは身内の私から見てもキリッと整った顔立ちをしていると思うのだけど、あまり感情が表に出ないところが玉にキズだ。
そのせいで、今までにも初対面の相手をこわがらせてしまうことがしょっちゅうあった。けれど空木さんに関しては、その心配はいらないみたい。
思いきって、私は口を開く。
「あの、お兄ちゃん。空木さんはまだ仕事が残っているのに、ちょっと抜けて来てくれてるの。だから、手短にお願いね?」
「ああ、わかった」
私のセリフにうなずいたお兄ちゃんが身体をひねり、空木さんへと視線を向けた。
「志桜から、話は聞いていると思うが。我が家の問題に、突然きみを巻き込んで申し訳ない」
「いえ、そんな。どうってことないですよ」
あくまでにこやかな表情で、間髪入れずに答える空木さん。本当は時間がなくて詳しい話をできていないのに、堂々たる態度でそれを微塵も感じさせない。
ブラックコーヒーと思われる紙コップの中身をひとくち飲んで、お兄ちゃんが続けた。
たった今手渡された空木さんの名刺を、まじまじと見つめている。
「『豊臣商事』の営業部主任……まだ若いだろうに、ずいぶんと優秀でいらっしゃる」
「とんでもないです。千楓さんこそ、『ミスミ電機』本社の商品企画部課長とは。俺なんて足もとにも及びません」
いつものことながら真顔のお兄ちゃんと感じのいい微笑みをたたえた空木さんの会話を、ふたりの間に挟まれながら居心地悪く聞く。
お兄ちゃんは身内の私から見てもキリッと整った顔立ちをしていると思うのだけど、あまり感情が表に出ないところが玉にキズだ。
そのせいで、今までにも初対面の相手をこわがらせてしまうことがしょっちゅうあった。けれど空木さんに関しては、その心配はいらないみたい。
思いきって、私は口を開く。
「あの、お兄ちゃん。空木さんはまだ仕事が残っているのに、ちょっと抜けて来てくれてるの。だから、手短にお願いね?」
「ああ、わかった」
私のセリフにうなずいたお兄ちゃんが身体をひねり、空木さんへと視線を向けた。
「志桜から、話は聞いていると思うが。我が家の問題に、突然きみを巻き込んで申し訳ない」
「いえ、そんな。どうってことないですよ」
あくまでにこやかな表情で、間髪入れずに答える空木さん。本当は時間がなくて詳しい話をできていないのに、堂々たる態度でそれを微塵も感じさせない。
ブラックコーヒーと思われる紙コップの中身をひとくち飲んで、お兄ちゃんが続けた。