イジワル部長と仮りそめ恋人契約
「それならよかった。だが俺としても、今までまったく男っ気がなかった志桜の『付き合っている人がいる』という発言は疑わしかったものでな。面倒なじーさんの指示とはいえ、こうして直接確かめに来たというわけだ」
お兄ちゃんのその言葉には、空木さんは無言の笑みだけを返す。
それはそうだ。よくわからない初耳の話に、下手な相づちを打つのは危険だと判断したのだろう。
それでも、ここまでの空木さんの態度に違和感などはまるでない。チャンスとばかりに私はまた口を挟んだ。
「ね、お兄ちゃん。こうして私の彼氏は実在したでしょ? わかったらおじいちゃんにも報告して、もうあの話はなかったことに……」
「いや。まだ信用はできない」
ひ、ひど……話の途中でバッサリ斬り捨てられた。お兄ちゃんはなおも続ける。
「知り合いに“フリ”を頼んだという可能性もあるだろう。失礼だが、志桜とはどういう経緯で付き合うことに?」
ギクリと身体をこわばらせる私を完全スルーして、お兄ちゃんが空木さんに問いかけた。
や、やばい。馴れ初め話なんて、そんなもの用意してないよ。
混乱の極みのまま空木さんを見上げる。彼は私に一瞬視線を向けると、にっこり素敵に微笑んだ。
「お恥ずかしい話なのですが。以前俺が落とした自分の名刺入れを、志桜さんに拾っていただいたことがありまして。名刺に載せている携帯番号に、わざわざ志桜さんが連絡をくれたんです。それが縁で、お付き合いに至りました」
「へぇ……で、お礼に食事でも、とか?」
「はい。初対面から志桜さんはとても印象が良かったので、僭越ながらこちらからアプローチさせていただきました」
すらすら淀みなく空木さんの形のいいくちびるから語られる嘘八百の馴れ初め話に、唖然。
す、すごいなこの人……あれ? 私本当にこの人と付き合ってるんだっけ? 空木さんの名刺入れ拾ったんだっけ?
内容も間のとり方も完璧な彼の話に、もはや当事者の私すら騙されそうになっている。
お兄ちゃんのその言葉には、空木さんは無言の笑みだけを返す。
それはそうだ。よくわからない初耳の話に、下手な相づちを打つのは危険だと判断したのだろう。
それでも、ここまでの空木さんの態度に違和感などはまるでない。チャンスとばかりに私はまた口を挟んだ。
「ね、お兄ちゃん。こうして私の彼氏は実在したでしょ? わかったらおじいちゃんにも報告して、もうあの話はなかったことに……」
「いや。まだ信用はできない」
ひ、ひど……話の途中でバッサリ斬り捨てられた。お兄ちゃんはなおも続ける。
「知り合いに“フリ”を頼んだという可能性もあるだろう。失礼だが、志桜とはどういう経緯で付き合うことに?」
ギクリと身体をこわばらせる私を完全スルーして、お兄ちゃんが空木さんに問いかけた。
や、やばい。馴れ初め話なんて、そんなもの用意してないよ。
混乱の極みのまま空木さんを見上げる。彼は私に一瞬視線を向けると、にっこり素敵に微笑んだ。
「お恥ずかしい話なのですが。以前俺が落とした自分の名刺入れを、志桜さんに拾っていただいたことがありまして。名刺に載せている携帯番号に、わざわざ志桜さんが連絡をくれたんです。それが縁で、お付き合いに至りました」
「へぇ……で、お礼に食事でも、とか?」
「はい。初対面から志桜さんはとても印象が良かったので、僭越ながらこちらからアプローチさせていただきました」
すらすら淀みなく空木さんの形のいいくちびるから語られる嘘八百の馴れ初め話に、唖然。
す、すごいなこの人……あれ? 私本当にこの人と付き合ってるんだっけ? 空木さんの名刺入れ拾ったんだっけ?
内容も間のとり方も完璧な彼の話に、もはや当事者の私すら騙されそうになっている。