へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする


教室をでてすぐ階段をくだり、真っ直ぐに靴箱へ向かうライザとは反対方向に1階の廊下を歩く。



向かった先は靴箱とは真反対に位置する校長室。

新校長となったカサエル先生に、掃除が終わったら校長室にくるように言われていたのだ。



カサエル先生が私を呼びだした理由は、たぶんレックスさんが絡む話しだろう。



私の口からカサエル先生に、ルキやレックスさんの話しは一切していないけど。

ヴィクトル校長先生にはすべてを話したから、もしかしたらカサエル先生はヴィクトル校長先生から何かを聞いたのかもしれない。



なにを言われるんだろうと、ドキドキしながら「失礼します。メイベル・パルディウスです」と丁寧に声をかけたあと、扉を3回ノックした。



扉の中から「入りなさい」というカサエル先生の低い声。

校長室から聞こえてくる声が、ヴィクトル校長先生の玉を転がすような声じゃないことがなんだか寂しかった。



「あの……私にお話しというのは…」



カサエル先生にソファーに座るよう促され、向かいあって座るかたちになった。

いっさい笑うことのないカサエル先生を前にすると、緊張で顔がこわばってくる。



「記憶喪失の少年……ではないのか。レックスがつくったという話せる龍の魔獣について話したいことがあってな」

「あぁ……はい」



やっぱりカサエル先生は、ヴィクトル校長先生から私が話したすべてのことを聞いているようだった。

< 284 / 292 >

この作品をシェア

pagetop