へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする


「ほっ……本当ですか⁉」



影で鬼教師と言われるほど厳しいカサエル先生が、穏やかな表情で私を見ながら頷いた。



カサエル先生は、私がまだ6歳の初等部の1年生だった頃から高等部の1年生となった今まで、かわらず担任のままだ。

もう10年くらいの付き合いになるけれど、カサエル先生が優しく笑っている顔なんてはじめて見た。



あの厳しいカサエル先生が笑うなんて…と内心で驚いていると。

すぐにまたいつものような鋭い目つきが戻ってきた。



「ただし、少年が魔獣だと絶対に他言しないこと。それはもちろん守れるな?」

「はいっ‼もちろんです!あっ……でも、もしかしたらもうルキは…」



戻ってこないかもしれません。

と言いかけたところで言葉を止めた。



ううん、そんなことない。

ルキはまた戻ってきてくれる。

レックスさんがまた魔法を使えるようになれば、消えてしまったルキもきっとまた現れるはず。



「もしかしたら……なんだ?」

「いいえ……やっぱりなんでもありません。すみません」

「もう少年は戻らないとでも思っているのか?」



そう聞き返してきたカサエル先生は、私が考えていることのなにもかもを見透かしているようだった。

「お前はマイナス思考だからな」と呆れたようにため息を混じらせる姿を見て、さすが10年間担任をしていただけあるな、と驚いてしまった。

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