俺はお前がいいんだよ

「……ちょっとプログラムのソースも拝見しますね」


途端に画面一面に、プログラムコードと思われるアルファベットが広がる。
それを桶川さんはすごい勢いで流し見た。
それで理解できるのかよって思ったけれど、「ああ、ふんふん、そうか」なんて言ってるから理解しているのだろう。

「とりあえずここに入力チェックを入れると、仮の対応策にはなりますねー」とかなんとか話している。

あまりに早すぎて桶川さんが言ったことをメモするので精一杯だ。やがて桶川さんは、方針を固めたらしく、大崎さんに対して、導入するべきソフトウェアとその効果等の説明をし始めた。


「今日できる対策はやっていきますが、ソフトウェア導入のほうはご検討ください。あと、管理者権限のあるユーザーがちょっと多いので、そのあたりの運用ルールを作っていただきたいと思います。ひな型となるものをお持ちしますので、ご検討していただければと」

「分かりました。あの、実は私来週から出張があって、その資料、明日までにもらえますか?」

「では、明日の午後にでも。お伺いして説明しましょう」

「はい。お待ちしています」


不安そうな大崎さんに頭を下げ、私と桶川さんは客先を出る。そして電車に乗ろうとしたところで、首根っこを掴まれた。


「どこ行くんだ」

「どこって電車……」

「時間的には昼飯だろ。こっちだ」


グイグイ引っ張られていく私。

「桶川さん、歩けますよ!」と反抗してみたけど、推定百九十センチの桶川さんと百五十五センチの私とではリーチが違い過ぎる。引っ張ってもらわないと完全に遅れる。


「ほらほら、頑張れよチビ」

「くー」


腹立つ。早歩きで息も荒くなっているというのに、悠々と歩いている桶川さんに追いつかないなんて。
足元だけを見て一心不乱に足を進めていると、彼の体に横からぶつかった。
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