俺はお前がいいんだよ
「感謝はしてます。でもお礼はもうちょっといい資料になってから言います」
「は……?」
宇宙人でも見るような視線が上から注がれる。やめて、その視線だけで小さくなりそう。
「なんで今言わねぇんだよ」
「だってっ。真の成果はまだ出せてないなって思うし」
「は、ははっ。お前ってちいせぇくせに負けん気強いな」
全開で笑うのも勘弁してよ。
イケメンは私なんて相手にしないと思えばこそ、私も思う存分観賞して楽しめるのに。
そんな風に笑われたら、手が届くと思ってしまう。
届くはずなんかないのに。並んで歩いたって絶対に恋人になんてみられるはずないくらい、あなたと私には雲泥の差があるのに。
「……明日の午前中までにこの資料完璧に仕上げて、午後には大崎さんにも説明します。絶対桶川さんを唸らせてやるから、見ててくださいね!」
勘違いして浮かれるなんてみじめだ。
だから顔を引き締めて、彼の指導に対する恩はパーフェクトな仕事で返そう。
それが、チビで可愛くもない私の、精一杯のプライド。
「よし、その調子その調子」
桶川さんは、私の意気込みをいい傾向だととらえたらしく、ご機嫌のまま、「腹減ったから夕飯付き合え」と私を引きずって近くのラーメン店に連れて行った。
昼とは打って変わったそのチョイスに笑ってしまう。