俺はお前がいいんだよ


とりあえず、自分の荷物をまとめながら、どうしてこうなっちゃったのかを考える。

落ちついて考えると、桶川さんの言ってることはもっともなんだ。
かつて私の周りにいた男の子達は、“小さくて守ってあげなきゃならない女の子”像を私に押し付けてくるか、小さいから御しやすいと甘く見てくるかのどちらかだった。
前者は、打たれ強い私の性格に幻滅していなくなったし、後者は意外と思い通りにならない私にイラついてストーカー化していった。
……だけど、それを勝手に桶川さんに当てはめて、いつか飽きるでしょうなんて言うのは、たしかに失礼な話だと思う。


私は改めて自分のいる状況を考える。

桶川さんのマンションに連れてこられて一週間。
チビだの、豆狸だの、さんざん言われていたような気がしていたけれど、それって私が自覚して自分から言っていることばかりで。
私が本当に傷つくようなことはあの人はひと言だって言わない。

ソファで寝ると宣言して実行しても、毎朝目覚めるのは桶川さんのベッド。
口で言うほど性的なアクションをしてくることはない彼に、私は徐々に安心し始めていた。

思えば桶川さんは、口も悪くて強引で、私のペースを乱すけれど、私の心に無理強いはしない。
だから彼の隣が凄く居心地が良くて、真綿のような温かさを持つこの部屋も居心地が良くて。
これに慣れきってしまったら、いつか一人に戻るときに、私はきっと立ち直れなくなってしまうんじゃないかと思った。

それは、ひとりで気を張って生きているより、もしかしたら怖いことなんじゃないかと思ってしまって。


「だから逃げ出したい……なんて根性ないよなぁ」


知ってる。だけど本当に怖かった。
桶川さんがあんまり格好良くて優しいから、信じきれなくなっちゃったんだよ。

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