俺はお前がいいんだよ
考えてみれば当たり前だ。
俺の腕にすっぽり収まってしまうほど小さな彼女は、大抵の男に力でかなうはずがない。俺から見れば小者でしかないあの男のストーカー行為も、高井戸にとっては大きな男が常に自分を狙い、どこかに潜んでいるという極限状態に感じられるはずだ。
それは、俺が予想するよりもずっと彼女に恐怖を与えただろう。
高井戸の手は寝ているときはいつも固く握りしめられていて、まるで身を隠すように小さく丸まって眠る。
彼女は寝ているときさえ安心していないのだと、俺はあの時、改めて気が付いた。
俺はいつものように彼女を抱き上げて、ポンポンと背中を優しくたたく。
持ち上げた時にいつも目をあけそうになるのだが、これをするだけで寝ていくのだ。
少し開かれた掌が、俺の服をぎゅっとつかむ。
ほら、かわいいじゃねぇかよ。
少しは自覚しろってんだ。
妖怪の豆狸だなんて思ってない。俺にとってお前は、かわいくて守ってやらなきゃならない女なんだ。
大体、遊びで付き合う女だったらその日のうちにヤッてるっての。
こっちはあまりにお前が逃げるから、まずは安心させてやんなきゃって気を使ってるんだっつーの。
「さっさと恋愛の舞台に上ってきやがれ」
そうしたらもう容赦しない。
俺から逃げないようにどんな包囲網でも敷いてやる。
額にキスをして、そのままベッドに転がす。
しかし高井戸が服を離さないので結局隣に滑り込むことになるわけで。
「お前本当に寝てんのか? ……ホント、これで手を出してねぇの褒めてほしいくらいだけど」
子供のように温かい体温に、ほんの少しの酔いも手伝って眠りの淵に落ちていく。
あー俺ら喧嘩してたんじゃなかったっけ、とか思うけど。そういうのももうどうでもいい。
だってさ。
こうしてくっついているだけで幸せなんてこと、そうそうあるもんじゃないだろう。