俺はお前がいいんだよ

「帰ってこなかったらどうしようって思ってました。これでお別れなのかなって思ったら、私、なんてこと言っちゃったんだろうって思って」

「高井戸」


すっかり目が覚めたように半身を起こして、桶川さんが私を見つめる。
ああだから、その整った顔は目の毒なんだってば。見つめられると私、どうしたらいいのか分からなくなる。


「あーもう。かわいい、お前は」

「きゃっ」


大きな手で抱き寄せられて、目元や頬に優しくキスが落ちてくる。


「泣くなって」


反射で抵抗しようとした両手がそれぞれの手に掴まれて、私の動きは封じられた。彼の唇が自由に私の顔の上を滑っていく。


「好きだよ、高井戸」

「んんっ」


キス、キス、キス。とめどなく続けられるそれは甘すぎて、私から少しずつ力を奪っていく。


「……抱いていい?」


熱っぽく耳元に囁かれる声。
そこで一気に我に返った。いや待って。それはちょっと。


「ダメです」

「っかー! なんなんだよ。お前。人のことここまでけしかけておいて」

「けしかけてなんてないですけどっ! だってダメです。今日はお風呂も入ってないし、汗臭いし、変な顔してるし」

「俺なんて酒臭くて汗臭いぞ」

「自慢することじゃないですよ!」


そこ張り合ってどうするの!
呆れた顔をしたら、桶川さんはしぶしぶ私の手首を離してくれたので、ようやく自由になって服の乱れを直した。


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