プレシャス～社長と偽りの蜜月～
「社内で飛び交っている噂は真実だったんですね・・・」

｢噂？」

「社長の略奪愛だと」


「・・・そうよ。私には付き合っている彼氏が居たの。でも、その彼氏はもうこの世に居ない」

「・・・私は確かに社長に好意を持っていますが、貴方の口車に乗せられて人の道を踏み外すようなコトはしませんよ」

「豊永さん！？」


「社長が待ってます。コーヒーの淹れ方位、憶えているでしょ？」

豊永さんと一瞬は心が通い合ったけどすぐさま離れてしまった。


常識人の彼女をそそのかすコトが出来なかった。

別の方法を考えるしかなさそう。

私は適当に淹れて、雅人に持って行った。

「どうぞ」

素っ気ない雰囲気でソーサーにのるカップを置いた。するとカップの中のコーヒーが書類に飛んだ。
茶色の飛沫が白い紙の書類を染めた。

「申し訳ありません・・・」

「コーヒーもキチンと淹れられないようなら、君の経済的な独立は出来ないね。俺の扶養者のままで居ろよ」

「雅人に扶養者されるのは絶対に嫌っ」

「離婚を円滑にさせようと俺と豊永さんを不倫の関係にしようなんて・・・姑息だな」

「私達の話…訊いていたの？」

「ああ」

「最低」

「それよりもどうするんだ？この書類のシミ？」
雅人は、コーヒーの飛沫で汚れた書類を見せて詰め寄った。自分が悪いんだけど、私は奥歯を強く噛み締めて悔しがった。




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