プレシャス~社長と偽りの蜜月~
コーヒーすらまともに淹れられない秘書なんて社長のお荷物になるだけじゃない。


午後からは雅人と府中にある工場の視察。
豊永さんに留守を頼み、私が同行した。


デンタル用のインプラント及び関連商品などのデンタル材料の製造工場。商品開発の研究所も併設されている。

工場長の案内で製造ラインを視察した。

互いの会社が上手く溶け合い、利益も順調に伸びていた。

丁寧なお見送りを受けて、府中を後にする。


オレンジ色の眩しい光が車内に入り込む。信号待ち、私が目を光に細めていると雅人が胸ポケットに入れていたサングラスを差し出した。


「眩しいんだろ?」

「別に・・・」

「いいから、付けろ」

雅人は受け取らない私の膝にサングラスを投げた。

そして、青信号に気づき、車を急発進させる。

思えば、雅人は私が入院している間、どんなに仕事が多忙でも毎日お見舞いに顔を出してくれた。





< 46 / 87 >

この作品をシェア

pagetop