プレシャス~社長と偽りの蜜月~
近くのカフェに入った。

「ジュースだけ?お腹の赤ちゃん、それで育つのか?」

樹彦はナポリタンスパゲティセット、私はオレンジジュースをオーダーした。


「今は悪阻で気分が悪いから…何も食べれないのよ」

「秘書に復帰したかと思えば、妊娠してまた休職って・・・」

「それよりも仕事はどう?」

「上々だよ」

「そっか」

「これは企業秘密だが…新商品として開発中の医療機器これがまたスゴいんだ・・・」

雅人は花菱金属工業が持っていた精密な加工技術を使い、新商品の開発を熱心に進めていた。


「記憶は戻せそうか?」

「伊集院先生もこれと言った治療方法はないって・・・」

何かのきっかけで突然戻るコトも稀にあるらしいが、期待はしない方がいい。

「せめて事故当日の記憶だけでも戻したい」

「戻してどうするの?事故の記憶は思い出さない方がいいと思うぜ」

人が一人死んでいる。

目を覆いたくなる記憶かもしれない。

でも、亡くなった仁志は私の彼氏。


「幼い時の記憶を戻した方がいいんじゃない?雅人がお前の執事だった頃の記憶。その方が絶対にいい」

「何で急に親身になってくれるの?」




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