猫と手毬
お皿の中はすっかりからっぽ。



立樹のお皿の上にも何もなくてすっかり完食していた。



僕はいつも通りお皿を洗う所に頭とか前足とかでお皿を押していく。



立樹はそれを回収してお皿を洗う。



立樹がお皿を洗ってる間僕は窓際でずっと月を見てた。



前まで満月でもこんな綺麗に見えなかったのに今はキラキラと輝いて見える。



これも立樹のおかげなのかな。



ずっと窓際に座って窓の外にある月をみる。



この家は前までいた道路とかそんな所よりちょっと狭いはずなのに退屈しない。



前は外にいても退屈で仕方なかったのに。



こんなに楽しく思えるのは初めてだ。



外の世界で遊んでいても全然楽しくなかったのに。



窓という薄いガラスがあって外に出れないけど外に出ようなんていう気にもなれない。



だってここに居るのが凄く楽しくて嬉しくてしかたないから。



これも全部立樹のおかげなのかな。



こんな灰色で薄汚かった僕を温かく迎えてくれた。



こんな何も出来ない僕に楽しい事を教えてくれた。



手毬や猫じゃらしで遊んでくれた。



それも全部立樹のおかげなのかな。



そんな事をかんがえながら僕は綺麗に輝いている月を見る



よく見ると月は手毬に似ている。



黄色と白の手毬と似ててすごく綺麗。



僕は廊下に行って箱の中にたくさん入っている手毬から月に似てる手毬を探す。



その中には黒や緑と不思議な色もあった。



でも黄色は無くて手毬が置いてある廊下の棚から黄色の手毬を探す。



すると一番月に似た手毬を見つけた。



ちょっと濃い黄色と薄いレモン色のグラデーションの手毬だった。



僕は近くに積み重なっている本を上手く使って登る。



僕の身長では届かない三段目の所にその手毬はあった。



お店の棚より低いところにあってすぐに登れた。



僕はその手毬を棚からころがして落とす。



すると手毬は落ちて廊下をコロコロ転がっていく



僕は棚から降りてその手毬を頭で押しながらリビングに戻る。



立樹はまだお皿洗いをしてた。



きっと後で僕の所に来てくれるから窓際まで僕は手毬を運んでいく。



やっぱり手毬と月は似ていて僕は月で遊んでいる気分になった。



大きさは僕と同じくらいで結構大きな手毬だった。



小さい手毬とは違って上手く転がせないけど僕は見てるだけでも面白かった。



月が僕の家にもあるみたいで不思議な気分だった。

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