私の手の行方
誰も私の手なんて、気にしてない。

特別ネイルとかしてるわけでもないから
目立つこともない。何の変哲も無い手。

『石田の手って、こうなんていうか
女の子の手だよな』「そう?ネイルしてないよ」

『そっちじゃなくて、優しいんだよ』
「よくわからないな、ところで仕事順調?」

話を無理矢理変えたけど、
空気がおかしくなるわけでもなく
お互いの仕事の近況を話し合った。

いつまでも、お邪魔しているわけにいかない。
雨ちゃんは、とうの前に
夢の世界に飛びだっていた。

「そろそろお暇するね」
『送ってく』「近いから大丈夫」
『送ってく』「本当に、大丈夫だから」
『夜遅くに女一人で歩かせるなんて男がすたる』

そう言って、既にスニーカーを履いて
準備完了の斎藤君は早く行くぞとせかす。

雨ちゃんのスヤスヤ眠る寝顔をもう一度
眺めて、さよならした。
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