遠い昔からの物語

中尉がゆっくりと腰を動かし始めた。

その腰の動きと共に、脳天めがけて(きり)で突かれたように()しる。

わたしは歯を喰いしばって、その痛みに耐える。

中尉の、汗でびっしょりになった背中へ回したわたしの手が、爪を立てる。

「……わしゃ……えっとぅ焦らされとるけぇ……もう限界じゃ……わりゃ、えらかろうが……ちいっとの()……辛抱してくれや」

中尉が荒い息で苦しそうに云った。

彼は十代の頃、親元を離れて全国各地から集まった者たちと海軍兵学校で寝食を共にし、現在も普段の生活では方言を使っていないせいか、わたしと話すときもどこか訛りきれてないところがあった。

ところが、今は完全に生まれ育った地の言葉になっている。


中尉の腰の動きがこれまでとは打って変わって速くなった。

当然、これまでと比べものにならないほど(にが)る。

中尉の背中に回した手が(ほど)け、蒲団の上に落ちた。


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*はしる ー 電気が走ったような鋭い痛み
*えっと ー とても・たくさん
*えらい ー (つら)い・たいへん
*にがる ー 耐えがたい重い痛み
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