溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
「ううん、違うの。ありがとね、青葉ちゃん。ただ、いつからこんな世の中になったんだろうって考えちゃって」
「千葉さん……?」
「ここをオープンさせたとき、誰でも気軽に、来たいと思った時に来られるようなお店にしたいと思ってて、予約制にしなかったの。仕事の合間だったり、子育ての空き時間だったり、ちょっとした隙間時間に来られるように敢えてそうしてた。でも段々とお客さんが増えてきて、電話で予約を受けるようになって。それが今、二言目にはネットで予約が出来なきゃ不便だ不便だって言われてさ」
そっか……。いくら信念を貫きたくたって、今のニーズに合わせないと向かい風を受ける。分かる気がする。みんなと同じが正しい。子供らしくあれ、女性らしくいろ。そうじゃないと変わり者だと言われるのと同じように。
「それでもしばらくは従来のやり方を変えたくなくて、頑として作んなかったけど。最近あまり予約が入らなくなってきて。変に意地張って潰れたら元も子もないなって」
……なんだかそれも切ない。きっとたくさん葛藤した末に、九条さんに依頼したんだろうな。