溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
妙な緊張感の中先ほどの部屋に戻ると、九条さんがお店に置いてあったフリーペーパーを読んでいた。
もじもじしているとそんな私にすぐに気が付き、九条さんが視線を上げる。
「えっと、すみません、お待たせして。変……ですよね?」
「……」
静まり返る室内に沈黙が続く。九条さんは何も言わずただ真っ直ぐ瞳をぶつける。何か言ってよ。無言が一番辛い。
「す、すみません。なんでもないです」
居心地の悪い視線に耐えられなくなった私は、慌ててごめんなさい、と俯いた。九条さんに感想を求めた私がバカだった。
「悪くないじゃん」
「えっ!」
予想だにしなかった言葉が飛んできて、思わず顏をあげる。
「女って怖いな、すげぇ化けよう」
化けようって、もっと言い方ってものがあるでしょうに。
「可愛いでしょ? 青葉ちゃん」
そこに後ろから追ってきた千葉さんが声高らかに言う。