溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜

「素直に褒めなさいよ、京吾」
「褒めただろ」
「どこがよ!」

真剣な顔で突っ込む千葉さんに、九条さんがふん、と鼻を鳴らす。それに煽られた千葉さんが、本当相変わらずなんだから!と、九条さんの肩を思いっきり叩く。

「使えない男ねぇ」
「スマホもまともに使えない朱音には言われたくない。解読不能なLINEを送ってくるな」
「だって、ちょっと触れただけで変なことになるんだもん」
「変なのはお前だ」
「あんたに言われたくないから!」

いまだ反撃姿勢を崩さない千葉さん。だけどそんな彼女を放置して、帰るぞ西沢、と九条さんが立ち上がる。

そんな今にも出て行かんばかりの九条さんの姿に慌ててソファに置いていた荷物をまとめると、ムッと口を尖らせる千葉さんに頭を下げた。

「あの、ありがとうございました。千葉さん」
「いいえ。女子を綺麗にするのが私の生きがいだから!それに青葉ちゃん、いい素材持ってるんだからもったいないよ。今度はネイルやってあげるね! ていうか、朱音でいいから」

そう言ってさっきまでの膨れっ面からは打って変わり、柔らかく微笑む。

改めてそういう目で見てみると、九条さんが朱音さんを好きになった理由がよく分かる。綺麗でちょっぴり不器用で、それでいて一緒にいると楽しい気持ちになれる人だから。

「ん? どうかした?」

朱音さんの声にハッとして首を振る。

「いっ、いえ。なんでもないです。それではHPが完成次第連絡しますね」

ぼんやりとする私を不思議そうな顔で見る朱音さんに会釈をすると、九条さんと一緒にお店を後にした。

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