溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
駅へ向かうため、九条さんと肩を並べ街中を歩く。朱音さんのお店は商業施設が並ぶ激戦区にあるだけあって辺りは賑やかだ。
「朱音さん、素敵な人ですね」
そんな中、隣を歩く九条さんにおもむろに声を掛ける。
「ただうるさいだけだろ」
「そんなことないです。明るくて可愛い人でした」
あんな素敵な人と九条さんの間に、いったいなにがあったのだろうか。実はあれから気になって仕方ない。
九条さんが朱音さんにこっぴどく振られたとか?もしくは付き合っている間に、捨てられたとか……。二人の雰囲気からして、
「ただのお友達ってわけじゃなさそうですよね」
頭に浮かぶまま口走ったことを、自分の声を耳にして知る。あ、しまったと思ったときには九条さんが足を止め、私を見下ろしていた。