溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜


「京吾だって、なにあの女。ただの仕事関係ってわけじゃなさそうね」

朱音さんがいなくなったのを見計らったようにユリさんが近づいてきて、耳元でコソッと言う。
やっぱり傍から見ても深い仲に見えるんだ。そう思うとなんだかいたたまれない気持ちになる。

「……大学時代の友人だってききましたけど」
「どうだか」

九条さんのところまでたどり着いた朱音さんを視感するユリさんの視線が怖い。

……って、そうだった! ユリさん九条さんのこと!

「あ、あの! ユリさん、福々亭行きませんか!」

仁王立ちして二人の様子を伺うユリさんの体を無理やりくるりと回転させそう言う。

「はぁ? 何言ってんの。まだ朝よ」
「あ、いや、でも……私お腹すきました!」

我ながら白々しいとは思ったが後には引けず、さぁさぁとユリさんを促す。そんな私をユリさんが眉を寄せ見ている。……やっぱり強引すぎたか。

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