溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
◇
「見ていられなかった?」
福々亭に着き座るやいなや、ユリさんがそう聞いてきて、へ?っと変な声が出た。
「あの二人のことよ、九条さんと朱音っていう女」
突然思いもよらないことを言い出すものだから、ユリさんを見つめたままキョトンとする。
「あんなの見せつけられちゃったら逃げたくもなるわよね。可哀想に」
よしよしと私の頭を撫でるユリさん。どうして同情されているのかわからないが、ユリさんの優しい温もりが心地よくて、ゴロゴロと猫のようにされるがまま身を委ねる。
「私でよければいくらでも慰めてあげるからね」
「はい、ありがとうござい……」
って、ん? 待て待て、さっきからどうも話がおかしいぞ。どうして私が同情されて、慰められないといけないんだ。