溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
「わ、忘れるわけないじゃないですか」
声を上ずらせながら慌ててそう反論すると、九条さんはそんな私を横目で見て鼻で笑う。
……なに一人で勘違いしてるんだろう。恥ずかしい。
「そういえばさっき、朱音に作りかけのHP見せたけど、素敵だな可愛いだの騒いでた」
「本当ですか! よかったぁ」
昨日帰ってきてすぐ取り掛かった。私の趣味全開で気に入ってもらえるか心配だったけど、喜んでもらえていたならよかった。
「あの、それで朱音さんは帰っちゃったんですか?」
どう見ても九条さんは一人。朝からどこか慌てたように駆けつけた朱音さんだったけど、もう用事は終わったのだろか。
「あぁ、とりあえず帰らせた」
とりあえず?その言葉が引っかかる。もしかして後で会う約束をしているのかな?それとも家で待たせているとか……。
「あいつ、昔から思い立ったらすぐ実行しないと気が済まないタイプな上に、どうでもいいことで騒ぎ立てるから手に負えなくて困る」
天井を仰ぐような仕草をする九条さんは、言葉通りちょっとうんざりした様子。