溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜

やり過ごすように仕事を済ませた帰路の空はどんよりと暗くて、今にも雨が降り出しそうだった。

今頃二人はどう過ごしているのだろう。どこまでも続く空の下でぼんやり思った。
昨日の朱音さんは天真爛漫といった言葉がよく似合う女性だったのに、今日の彼女は恋に溺れた儚げな女の子だった。

でもきっと好きな人を前にすると誰もがそうなってしまうんだって気が付いた。現に私だって朱音さんに嫉妬して、心が乱れている。感情がこんなにもくるくると変わるものだなんて知らなかった。

「西沢?」

ふう、とため息をつき駅へと向かい始めた矢先、私の名前を呼ぶ声がして振り返った。そこにはやっぱり!と笑顔で近づいてくるユリさんがいた。
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