溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜



「座って」

連れて来られたのは小さなバー。そこでユリさんは手慣れた様子でカウンターに座った私にカクテルを差し出す。

「あの……ここって」
「私のお店。実は本業と掛け持ちでここを経営してるの」
「そうなんですか! 全然知りませんでした」

椅子を回しながら改めてお店を見渡せば、暗い店内にはソファ席がいくつかあって、ユリさんの好きそうな音楽がかかっている。

ユリさんのほかに、若い女の子が二人いて、隠れ家的なバーは私たちのオフィスからさほど離れていない。

よくよく思い返せばユリさんを夜ごはんに誘ってもいつも用事があるからと断られていたっけ。電話も繋がらないことが多いし、なんとなく辻褄が合う。
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