溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
「はぁい、お待たせ。さんま定食大盛り」
あれこれ考えていると、こんがりと焼けた魚の良い香りが漂ってきて、私の意識を一気にもっていった。思わずごくりと喉が鳴る。
「おいしそう! いただきまーす」
その声とほぼ同時に九条さんも隣で静かに箸をつける。その姿はもうすっかり常連。
初めてここに九条さんが現れたときは本当に驚いて安息の地にまで来ないでよ、なんて嘆いていたのに。今では並んでご飯を食べられることが嬉しくなっている。ずっとこのまま変わらずにいたいな、なんて願っている。
報われないけど、誰の物にもならないのなら、彼が女嫌いでよかったのかもしれない。
「なにニヤついてんだよ」
九条さんの突っ込みに、ごほっと喉に詰まりそうになった。