溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
「あの、九条さんこれは違うんです! この人はユリさんで、どういうわけか男装していて」
ユリさんの腕の中で必死に言い訳する。すると九条さんの低い声が響いた。
「知ってる、離れろユリ」
うっ、声が怒っている。ユリさんもさすがにまずいと思ったのか、ハイハイと言って私を解放してくれた。
「油断も隙もない」
「どう? 九条さん。私今度からこの路線で行こうと思って」
「勝手にしろ。でも西沢には手を出すなよ」
「え~! なんのために髪切ってこんな恰好してると思っているんですか。全部西沢を落とす為じゃない」
えっ!? 落とすって? なんだなんだなんだ?いったいなんの話しているの?話題の中心は私のようだけど、完全に置いてけぼり。