溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
◇
「へぇ、西沢さんのために男に戻っちゃったんだぁ。すげぇ本気じゃないですか、ユリさん」
「でも一歩遅かったみたいだけど」
ぼんやりと靄がかかったような頭上で、そんな会話が繰り広げられていることに気が付く。薄っすらと目を開けると、横になる私を囲むように座るユリさんと真壁くんの姿があった。
なんとなく起きるタイミングが分からなくて、再びこっそりと目を閉じじっとする。
「ということは、二人くっついちゃったんだ」
「そういみたい」
「まぁどっちに転んだとして、俺には関係ないですけど」
狼狽えてる様子もなく淡々とそう話す真壁くん。どうしてそんな冷静な態度でいられるのだろう。私なんて驚きすぎて倒れてしまったというのに。もしかして知ってたの? ユリさんが男だって。