溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
「あんたさ、ここは頑張れとか、応援していますとかお世辞でも言えないの?」
「無理です。そういうの嫌いなんで俺」
「ホント、生意気やつ」
相変わらずな二人の会話。こうしていると何の変哲もない日常なのに、目を開くと男の姿のユリさんが居て、やっぱり違和感というか、まだ受け入れられない自分がいる。
今まで女友達だと思っていたから平気でユリさんの前で着替えもしていたし、ベタベタしていたりもしていた。いったいどんな気持ちだったんだろうと思うと、なんとなく気まずい。
「予想はしてましたけどね。こうなるって。九条さん、西沢さんのことになると、いてもたってもいられないって感じでしたし」
「そうそう、ことあるごとにバカみたいにムキなっちゃってさ。バレバレ」
「この前俺が西沢さんを彼女のフリさせて連れ出したときも、すげぇ怒られたし」
ん? それはもしかして、あのチーズダイニングバーに行った時のこと? そういえば翌日、九条さんに怒られたって言っていたっけ。