溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
「西沢を泣かしたら許さないって、青筋立てて言うもんだからまじ怖かったです」
そ、そんなこと言ってたの?! と、思わず叫びそうになるのを堪え寝たふりを続ける。
「周りはいやってほど感じてたのに、肝心のこの子は全然気が付いてなかったみたいだけど」
言いながら顔を寄せてくるユリさんの気配がする。思わず息を止める。
「ふふ、可愛い寝顔」
「それ以上やったら怒られますよ。社内で乱闘騒ぎなんてごめんですからね」
……ってことはなにか仕掛けようとしてる?
「俺知らないっすよ」
「あんたが黙っていればいいのよ」
嘘! 本気? ダメです! 私まだ九条さんともしてなんだから!
「うっ、うわー! よく寝た! あれ? 二人ともどうしたんですか?」
我ながら白々しかったかもしれないと思いながら、体を起こしグッと伸びをしながら無理やり作った笑顔を向ける。
そんな私を見て明らかにユリさんが肩を落とし、その傍らで真壁くんが口元を隠しながらプッと吹き出すように笑った。