溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
「お目覚め? 後ちょっとだったのに」
残念、とおどけて言うユリさんは、やっぱりどこからどう見ても男の人で。しかも改めて近くで見てもイケメン。雑誌のモデルさんみたいだ。
「あの九条さんは……」
「なんか急ぎの電話がかかってて、その対応してる」
「そう、ですか」
一睡もしていないだろうに。まだ仕事しているんだ。ちょっと心配になる。
「さっき、どっちが倒れた西沢さんを運ぶか揉めて大変だったんですよ。西沢さんモテモテっすねー!」
いまだ頭がぼんやりする私に、茶化すように真壁くんが言う。
「最後はユリさんの粘り勝ちでしたけど」
その言葉にユリさんが得意げにガッツポーズをする。確かに以前からユリさんは女の人にしては背が高いし、力も強いと思っていた。でもそれが男性だからなんて思いもしなかった。