溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
「いい度胸だな、お前たち」
そんな中、突如低い声が聞こえてきてハッとしながら三人同時に振り返る。そこにはいつからいたのか、呆れたような表情を浮かべ腕組みをする九条さんが立っていて、どっと冷や汗が流れる。もしかして今のやりとり見てた?
ハラハラとしていると、
「いい加減仕事しろ!」
と怒号を浴びせられ、我先にとばかりに仮眠室から飛び出すように駆け出した。
たった一言で人を動かすことができる彼はやっぱり誰もが恐れる鬼上司。だけど私にだけ甘い眼差しを向けてくれる。
現に今だって目の前を通り過ぎる時、一瞬目が合って、目元だけで微笑みかけてくれた。
ただそれだけなのに飛び上がるほど嬉しくて、気がついたらデスクまで自然とスキップしていた。