溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
なんという洞察力。まるで後頭部に目でもついているかのようだと思いながら、側に落ちていた雑誌を拾い手渡した。
「伝染だなんて……九条さんは私と違って大人ですし、まさか」
「大人だから緊張しないとでも?」
試すような瞳を向けられドキリとする。その視線に居心地の悪さを覚え慌てて逸らすと、クイッと顎をすくわれ無理やり目を合わせられた。
「すげぇしてるよ、」
「え?」
「ずっと自分のものにしたいと思ってた女が今目の前にいるんだからな」
ストレートな発言に思わずキュッと口元を食いしばる。ずっとものにしたかっただなんて。だけどどうして私なんだろう。決して容姿がいいわけでも、要領がいいわけでもない私のどこがよかったんだろう。
むしろ迷惑ばかりかけていたのに。それに九条さんなら女の人に不自由しないだろうに。