溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
「どうだった? 楽しかった? いっぱい遊んだ?」
どっちをとればいいのかと、迷うように俺とユリを交互に見ていた西沢だったが、俺が視線を下げるとすっかり男に戻ってしまったユリに旅先での話を聞かせていた。
それをうんうん!と頬杖をつき、西沢を覗き込むような体勢で嬉しそうに聞くユリ。
今ではこの光景も当たり前になってしまったが、ユリに西沢のことが男として本気で好きだと打ち明けられたときはすごく焦った。
西沢はここのマスコット的存在で、誰のものにもならないと高をくくっていた俺にとって寝耳に水だった。
しかも当の本人は超鈍感ときたもんだ。俺の気持ちを知るはずなければ、ユリが女だとつい最近まで誤解していたくらいだから、どうしたらいいものかと真剣に悩んだりもした。
「で? 九条さんとはイチャイチャできた?」
一瞬だけ俺のほうに視線を寄越して、茶化すようにユリが言う。その発言にプログラムでも組み込まれたかのように西沢が動揺し始める。