ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ2 【完】
僕はすぐさま駆けよる。
――ドサッ。
しかし、重力のままに倒れた彼を受け止めることはできなかった。
「う゛っ!」
傍らに立つと、生々しい血の臭いが襲い、むせる。
檻の中のライオンは、彼の腕をおもちゃのようにもてあそびながら、肉を喰いちぎっていた。
「ン゛グッ……ヒダイッ! い゛たぃよ!」
「…………」
……これが呪いの力なのか。
「っ……」
どんな言葉をかけたらいい。この残酷な惨状を前にして。
「う゛ぐっ……あ゛あ゛ぁ!!」
肩口から噴き続ける血が、雨に希釈されてあたりに広まっていく。
「浩介! しっかりしろっ!」
「ぁ゛う゛っっ゛っっ」
生臭い血の臭いが野生の嗅覚を刺激したのか、はたまた瀕死の彼が放つ、最も原始的な叫びに共鳴しているのか。
動物たちの遠吠えが園内を渦巻く。
「た、たす゛……けて。死に゛たくない……」
この騒ぎで、警官はすぐにここへ駆けつけるだろう。
「大丈夫! 大丈夫!」
悶え苦しむ彼を抱き、そう言葉をかけ続けると、浩介は安眠するように瞼を閉じた。
数分後……。
懐中電灯の光が揺れながら、こちらに向かってくる。
……このままじゃ面倒なことになる。
そう判断し、浩介をその場に放置して、暗がりの中へ身を隠した。
「う、うわあぁぁぁ! な、なんてことだ……は、早く救急車の要請を!」
「はい!」
駆けつけた聞き覚えのある警官の声に、僕は目を細め、立ちあがった。
そして、騒然としはじめた園内のどさくさに紛れて脱出した。