ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ2 【完】
「ハァ──、ハァ──、ハァ──」
遠回りをして路地に入る。
自分の荒い息だけが周囲に響いていた。
……どこだ。
見渡すかぎり、タクミの姿はない。
「ハァ――。久しぶりに走ったな……」
足を止め、少し息を落ち着かせる。
──ブオオォォーン。
……ん?
どこからか聴こえてくるこの音に囚われた。
この付近で、なにか大きな機械が稼働しているようだ。
耳だけを頼りに歩を進める。
……ここか?
路地に面した、とある小さな工場のシャッターに耳を当ててみる。
──ブオ゛オ゛ォォーン゛。
「ここだ!」
看板には“木材加工”と書かれていた。
それにしても、おかしい。
工場の中はまっ暗で、どこからも明かりが漏れていないのだ。
こんな早朝なら当たり前といえば、当たり前だが。
……機械の誤作動?
──ギュイ゛ィ゛ーーッン゛。
「え!?」
音が変わった。同時に、
「ぐう゛あ゛あぁ゛っ!!」
中から、心臓をもぎ取られたような叫び声。
……タクミ!?
周囲をうかがうと、裏口の扉が少しだけ開いていた。
誘われるかのように、ドアノブへ手を掛ける。
「タクミ、いるのかー?」
──ブオ゛オ゛ォォーン゛。
「おーいっ!」
──ブオ゛オ゛ォォーン゛。
人の気配はない。
ズズッ──
サザザザサザッ──
ゆっくりと、着実に。
ズズズッズッ──
ズザザザザザザッ──
月光を浴びて、“ソレ”はいた。
「み、見える!」
もがくように身体をクネらせ。
ズズッ──
サザザザサザッ──
鮮血の尾を引き、地面を這って向かってくる黒い塊。