ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ2 【完】



エレベーターを降り、人気のない非常階段へ連れていかれた。

「自分で出して! できるよね?」

あくまで服務規程内で収めたいらしく、言葉のうえでは僕に判断をゆだねている。

すっかり観念し、ズボンの右ポケットから……100円ショップで買った物を出した。

「なんで、果物ナイフなんか持ち歩いてるの!?」

「…………」

言えない。言ったら、確実に捕まる。

「キミ、名前は!?」

さっきよりも強い口調での身元確認。

……名前ぐらいは……。

「前原祐一郎です」

とたん、

「「…………」」

ふたりは顔を見合わせた。

「もしかして、殺された前原ことみさんの?」

「はい……兄です」

素性を明かすと、威圧的だった態度を翻す。

「まさか、妹さんのために復讐しようとしたの?」

相手から言ってくるなら、ふたつの言葉だけで済む。

「はい」

ひとりが僕の手からナイフを取りあげた。

「そんなことして、亡くなった妹さんが喜ぶと思う?」

「…………」

「帰りなさい。そして、彼女ではなく、その思いを今すぐ殺しなさい!」

「え!?」

意外な言葉に、僕は顔をあげた。

目が合うと、ふたりは手を離す。

「み、見逃してくれるんですか?」

「あぁ」

「うん」

俗に言う、情状酌量ってやつだろうか。

背中を押されるようにして正面玄関まで付き添われ、その間、菜摘の容態を教えてくれた。

彼女は捕まったときこそ激しく暴れたが、パトカーに乗せられると、すっかり落ち着きを取り戻したという。

しかし、なにを訊いても、延々とブツブツつぶやいているだけ。

かと思うと、再びスイッチが入って暴れだす。

それを繰り返しているらしい。

「その拍子にケガをしたし、鎮静剤も投与するためにここへ運んだんだ」

「そうですか……」

「前原くん、キミの無念は痛いほどよくわかる。でもね、警察を信じて任せてほしい」

「…………」

僕はその言葉を受け入れ、病院を去った。

思い出したように携帯の電源を入れると、すぐに着信が入る。



 
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